施設でのお正月の過ごし方

高齢の方にとって、お正月は一年の中でも特に思い入れの強い行事です。
「家ではもう難しいけれど、施設ではどんなお正月を過ごしているんだろう?」と気になるご家族も多いと思います。ここでは、一般的な高齢者施設でのお正月の過ごし方をイメージしやすいようにご紹介します。
年末の準備も“行事”のひとつ
12月に入ると、施設の中も少しずつお正月モードになっていきます。
- 玄関やフロアにしめ縄や門松、干支の飾りを設置
- 利用者さんと一緒に貼り絵やちぎり絵で正月飾りを作成
- 俳句や短歌を書いて掲示板に貼る
大がかりな大掃除は安全面から職員が中心になりますが、テーブル拭きやタオル畳みなど、無理のない範囲でお手伝いしてもらうこともあります。
「誰かの役に立っている」という感覚は、年末の忙しさの中でこそ生き生きとした表情につながります。
元日の朝は“ゆっくり・丁寧に”スタート
施設のお正月は、慌ただしく動き回るというより「ゆっくり・丁寧に」が基本です。
- いつもより少し遅めの起床時間にする
- 起き抜けの血圧・体温などをいつも通りチェック
- 「あけましておめでとうございます」と一人ひとりに新年のご挨拶
年末年始は、環境の変化や気分の高まりで体調を崩しやすいタイミングでもあります。
普段と同じリズムを大きく崩さないようにしながら、少しだけ“特別感”を加えるのが施設ならではのお正月です。
行事食としてのおせちと食事の工夫
お正月といえば、おせち料理。
施設でも、できる範囲でお正月らしい行事食が用意されることが多くなっています。
- 黒豆・伊達巻・紅白なますなど、噛みやすいものを中心に少量ずつ
- かまぼこや昆布巻きなどは、誤嚥(ごえん)に配慮して切り方やとろみを工夫
- ご飯は白飯のほか、おかゆ・やわらかご飯など普段どおりの形態も選べるように
見た目は華やかでも、塩分や糖分、飲み込みやすさへの配慮が欠かせません。
管理栄養士がいる施設では、持病(糖尿病・心疾患・腎臓病など)に合わせたメニュー調整が行われることもあります。
「みんなと同じものを食べている」という安心感を残しつつ、個別の健康状態に合わせるのが施設のおせちです。
施設内での“初詣”と外出支援
近年は、感染症や天候、身体機能の低下などの理由から、必ずしも全員で神社に出かけられるとは限りません。
そのため、施設内で“初詣気分”を味わえる工夫がよく行われます。
- フロアの一角にミニ神社風コーナーを作り、お賽銭箱や鳥居の飾りを設置
- 手作りのおみくじや絵馬に願い事を書いてもらう
- 神社の風景や参拝の様子を映した動画をモニターで流す
状態が安定している方や、家族付き添いが可能な方については、近隣神社への短時間の初詣外出を行う場合もあります。その際は、
- 車椅子の段差や坂道の確認
- 寒さ対策(防寒具・ひざ掛け・カイロなど)
- 混雑を避けた時間帯の調整
といった安全面への配慮が重要になります。
お正月ならではのレクリエーション
お正月のレクリエーションは、昔ながらの遊びが主役になります。
- 絵札を大きく印刷したかるた取り
- 目や口を大きくした“福笑い”で大笑い
- 太い筆やサインペンを使った書き初め
- 昭和の歌謡曲や童謡を流しての合唱・歌レク
難しいルールは取り入れず、「勝ち負けよりも、一緒に楽しむこと」を大切にしています。
上手・下手を評価するのではなく、「こんな絵を描いていた」「子どものころはこんな遊びをしていた」といった思い出話に花が咲く時間でもあります。
ご家族との時間をどうつくるか
お正月は、ご家族にとっても「会いに行きたい」と思うタイミングです。
一方で、施設には感染症対策や人員体制などの事情があり、面会の方法や時間、人数に制限が設けられていることも少なくありません。
そのため、
- 事前予約制での対面面会
- 短時間での面会+別フロアでのオンライン面会の組み合わせ
- 帰省が難しいご家族とのビデオ通話サポート
といった形で、一人でも多くの方が顔を見て話せる機会を整えようとする施設も増えています。
「直接会うのが一番うれしい」のはもちろんですが、画面越しでも、声を聞いたり顔を見ることは大きな安心につながります。
変わるところ・変わらないところ
施設でのお正月は、
- 体調や安全に気を配る
- スタッフの勤務体制を維持する
- 感染症の流行状況に対応する
といった理由から、どうしても“家庭のお正月”とは違う部分が生まれます。
しかしその一方で、
- 年末年始を意識した飾りつけ
- ささやかでも特別感のある食事
- 昔ながらの遊びや歌での団らん
- 「今年も一緒に新年を迎えられましたね」という声かけ
といった“変わらない温かさ”を大切にしている施設も多くあります。
ご家族としては、「どんなふうに過ごしているのか」「面会はどうなっているのか」など、気になる点は遠慮なく施設に確認してみてください。
施設で過ごすお正月は、決して“あきらめ”ではなく、その方の安全と生活を守りながら、その人らしさを大切にするための選択肢のひとつです。
大切な人が穏やかに新年を迎えられるように、家庭とはまた違ったかたちの「お正月の風景」が、今日も多くの施設で工夫されています。
(広報担当)
