ドナネマブはどんな薬? アルツハイマーと介護家族にできること

ドナネマブとは
ドナネマブ(商品名 ケサンラ®/英語名 Donanemab, 製品名 Kisunla®)は、米国イーライリリー社が開発したアルツハイマー病治療薬です。モノクローナル抗体に分類され、脳内に蓄積する「アミロイドβ(Aβ)」というタンパク質を標的に作用します。この薬はアミロイドプラークを減らすことを目的としており、従来の対症療法とは異なるアプローチを取っているのが特徴です。
承認の経緯
日本では2024年9月に「ケサンラ点滴静注液」として承認を受けました。適応は、軽度認知障害(MCI)あるいは軽度認知症にあたるアルツハイマー病患者で、アミロイドβの病理が確認された場合に限られています。
米国では同年7月にFDA(米国食品医薬品局)が正式に承認しています。いずれの国においても「早期段階での使用が前提」とされており、中等度以降の段階では有効性が示されていないと説明されています。
臨床試験で見られた効果
TRAILBLAZER-ALZ 2試験などの臨床データでは、ドナネマブ投与群はプラセボ群と比べて認知機能の低下が28〜29%ほど遅れる傾向が確認されています。この数字は「進行抑制の一つの目安」として発表されています。
また、18か月の投与期間を設定した試験では、途中でアミロイドプラークの除去が確認できれば、投与を打ち切る選択肢もあるとされています。つまり、長期にわたって延々と続けるのではなく、効果の到達点に応じて柔軟に治療方針を調整する可能性があるということです。
副作用と安全性
最も注意が必要とされるのは「アミロイド関連画像異常(ARIA)」です。これは脳の腫れ(ARIA-E)や小さな出血(ARIA-H)などを指し、定期的なMRI検査でモニタリングされます。多くは無症状とされていますが、中には症状が出るケースも報告されています。
さらに、APOE ε4という遺伝子を持つ方では、ARIAのリスクが高まるとの報告もあります。そのため、投与前には遺伝的背景を含めてリスクを把握しておくことが望ましいとされています。
介護への影響
ドナネマブは「認知症治療の選択肢を広げる可能性がある薬」として注目されています。
- 早期受診の大切さ
軽度段階でなければ効果が見込めないとされているため、物忘れが気になるときに早めに受診する重要性がさらに高まったといえます。 - 進行を遅らせる意味
認知機能の低下を抑えることで、自立した生活を維持できる期間が延びると期待されています。その分、介護する家族が心の準備を整えやすくなるとも考えられます。 - コストや負担
定期的なMRIや専門施設での検査が必要なため、通院・費用の負担は小さくありません。この点は今後の課題と指摘されています。
医療の進歩が示す明るい兆し
認知症は長らく「避けられない進行」を受け入れるしかない病とされてきました。しかし、ドナネマブのような薬の登場によって、「進行を遅らせる」という新しい選択肢が現れています。これは治療のパラダイムが変わりつつある証拠ともいえるでしょう。
もちろん課題は多いものの、こうした医薬品の進展は、介護のあり方や本人の生活設計にポジティブな変化をもたらす可能性があります。
医療の進歩により私たちは、まだまだ良い方向に向かっているという明るい兆しを感じることができるのではないでしょうか。
(広報担当)
