近年の介護にまつわる問題

~8050問題から9060問題へ/老老介護・認認介護の現実~
介護の現場では、年々さまざまな課題が浮き彫りになっています。少子高齢化や核家族化が進むなかで、家族のかたちも、介護のかたちも大きく変わってきました。
この記事では、「8050問題」「9060問題」、そして「老老介護」「認認介護」といった、近年注目されている介護にまつわる問題を取り上げ、いま何が起きているのか、そして私たちに何ができるのかを考えてみたいと思います。
1.8050問題から9060問題へ 〜長寿社会が抱える新たな課題〜
「8050問題(はちまるごーまるもんだい)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これは「80代の親が、50代の子どもの生活を支えている」状況を指します。特に、引きこもりの子どもを抱える高齢の親が増えており、親が亡くなった後の生活が成り立たなくなるリスクが社会問題となっています。
しかし、最近ではこの問題がさらに深刻化し、「9060問題(きゅうまるろくまるもんだい)」という言葉も出てきました。こちらは「90代の親が、60代の子を支える」状況です。少し前までなら90代というと、人生の終盤という印象でしたが、医療の進歩や健康志向の高まりで、90代でも元気な方が増えています。
その一方で、60代になっても子どもが定職に就けず、親の年金や支援に頼って暮らしているケースが増えているのです。
ここで問題になるのは、単に経済的な依存だけではありません。高齢の親自身も体力や判断力が衰えてきており、子どもを支えるどころか、自分自身の介護も必要になってくるケースが出てきます。
つまり、「介護が必要な親」と「生活が不安定な子」の両方が、誰の助けも得られず共倒れしてしまう危険性があるのです。
2.老老介護、認認介護という現実
8050問題や9060問題とも密接に関係してくるのが、「老老介護(ろうろうかいご)」です。これは、65歳以上の高齢者が、同じく高齢の家族を介護している状態のことです。夫が妻を介護したり、姉が弟を支えたりと、さまざまなケースがあります。
介護は体力も精神力も必要とする重労働です。若い人でも大変な仕事なのに、それを高齢者同士で担うとなると、無理が生じるのは当然です。腰を痛めたり、認知症の家族に振り回されたり、時には虐待や心中といった悲しいニュースに発展することもあります。
さらに深刻なのが「認認介護(にんにんかいご)」です。これは、認知症の高齢者が、同じく認知症の家族を介護している状態のことです。
一見するとにわかには信じがたい状況ですが、実際にこうした事例は増えています。
たとえば、軽度の認知症の妻が、より重度の認知症の夫を介護しているケースです。本人たちにとっては「自分がしっかりしている」と思っているかもしれませんが、実際には薬の飲み忘れ、火の不始末、徘徊など、危険な状況が生まれやすくなります。
3.家族だけでは限界がある
かつては「家族が介護するのが当たり前」という考えが一般的でした。しかし、今やその考えだけでは立ち行かなくなっています。
高齢者が高齢者を支える社会では、家族だけに責任を負わせることは現実的ではありません。
地域包括支援センターやケアマネジャーといった専門職の支援、訪問介護やデイサービス、ショートステイ、そして有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの社会資源を上手に使うことが、今後ますます重要になってきます。
また、介護を必要とする本人だけでなく、介護をする側へのサポートも必要です。「介護うつ」や「介護離職」を防ぐためにも、相談できる窓口を持ち、周囲とつながりを持つことが大切です。
4.まとめ:今、私たちにできること
介護にまつわる問題は、決して他人事ではありません。誰もが将来、介護する側にも、される側にもなる可能性があります。
今のうちから、自分自身や家族の将来を考え、情報を集めておくことが大切です。介護保険制度について知ること、地域の支援体制を把握しておくこと、そして何より、「一人で抱え込まない」ことが、これからの介護社会を乗り越える鍵になります。
8050問題や老老介護、認認介護――。これらは決して特別な話ではなく、ごく普通の家庭に起こりうる現実です。だからこそ、社会全体で支え合う仕組みが必要であり、それを求めていく声が、今、求められているのではないでしょうか。
(広報担当)
