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被介護と介護者におけるそれぞれのQOLをあげるには?

はじめに

介護を取り巻く環境は、被介護者(要介護者)と介護者の悩みや負担が複雑に絡み合っています。片方だけを支えても、もう片方の満足度が低いままでは暮らし全体の質――すなわち QOL(Quality of Life) は向上しません。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、地域包括ケアの重要性はさらに増大しています。本稿では「二つのQOLが同時に高まるケア」をキーワードに、具体的な着眼点と実践例をまとめます。


1. 被介護者のQOLを高める視点

  • 身体機能の“維持より発見”
    リハビリ目標を「出来なくなったことの回復」より「まだ出来ることの強化」に置く。例えば立ち上がり練習を日課にし、「今日は5秒立てた」と小さな成功体験を積む。
  • 自己決定の尊重
    服を選ぶ、食事の順番を決める、散歩コースを提案する――選択肢を提示し“自分で決める時間”を確保すると意欲と尊厳が保たれる。
  • 役割の再創出
    元教師なら読み聞かせ、元農家ならプランター栽培など「社会とつながる役割」を用意する。役割は自己肯定感を高め、抑うつを減少させる。
  • 五感を活かした環境整備
    季節の花、好みの音楽、食事の香りなど五感を刺激する環境は認知機能維持にも寄与。安全だけでなく「感じる喜び」を設計する。

2. 介護者のQOLを高める視点

  • 情報の“見える化”
    服薬スケジュールや受診予定を共有カレンダーや紙ホワイトボードに集約し「次に何をすべきか」を家族全員で共有。精神的負担を減らすシンプルな方法。
  • レスパイト(休息)の制度化
    デイサービスやショートステイを“有事の避難所”ではなく“定期的な休暇”として予定表に先に書き込む。月数回でも「自分の時間が確保される」という安心感が介護継続力を高める。
  • 同じ立場同士の交流
    家族会・オンラインサロン・地域包括支援センターの茶話会などに参加し「自分だけではない」と感じることで心理的余裕が生まれる。
  • 心身の健康管理
    10分のストレッチ、近所を一周する散歩、睡眠アプリでの体調チェック――小さなセルフケアを“介護の一部”と位置づける。介護者自身の健康が、被介護者のQOL向上に直結する。

3. 双方のQOLを同時に高める五つの鍵

具体策期待される効果
① コミュニケーションの質を上げる1日1回「ありがとう」を伝える時間を設ける感情共有が増え信頼関係が強化
② “共通の楽しみ”を作るラジオ体操やテレビ体操を一緒に行う運動習慣と対話の両立
③ 負担と責任の分散兄妹で曜日ごとに当番制、行政サービスを併用介護者の燃え尽き防止
④ 目標を共有・更新「秋に近所の神社まで歩く」など共同ゴールを設定モチベーション維持とリハビリ効果
⑤ 地域との連携町内会や民生委員、ボランティアを巻き込む孤立感軽減とサポート拡充

4. 実践例:Aさん親子の場合

  • 背景
    80代母と50代長女の二人暮らし。長女はフルタイム勤務。
  • 取り組み
    1. 散歩距離を毎週日曜に二人で記録しカレンダーに貼付。
    2. 週2回のデイサービスを「母の社交日」「長女の自由日」と命名。
    3. 服薬と排泄状況をLINE家族グループで共有し兄弟もコメント。
  • 結果
    • 母の散歩距離が月平均600m→900mへ向上。
    • 長女のストレスレベルが10点中8→5へ低下。
    • 兄弟が週1回オンライン面会を行い、母の笑顔が増加。

5. まとめ

被介護者と介護者、それぞれのQOLを高めるカギは 「小さな選択肢と休息を意識的に設計すること」 です。専門職や公的サービスを早めに取り入れ、家族だけで抱え込まない体制を整えれば負担は確実に分散できます。自治体の介護予防教室や福祉用具専門相談員、ケアマネジャーなど専門家は「相談窓口」ではなく 「伴走者」 です。早期相談が両者のQOLを守る最大の保険になります。介護は長距離走――だからこそ、“続けられる仕組み”を先に作る ことが、お互いの笑顔を守る最短ルートと言えるでしょう。

(広報担当)

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